”Oom” Paul - ”うーむ”・ポール のこと2010/12/30

お断り:文字だけの記事です⇒ 2011年に入り,追記更新しました。

最近では (自分にとって)非実用的とも思えるシェイプにも関心が向き
円高を利用して ”Oom Paul” を仕入れようと F.I.P.を覗くと
既にソールドアウト(Genod c.1900 Deep Oom Paul). 

ついでに 解説を眺めていたら 次の一節が気になった
 ・・・ the classic deep Oom Paul, derived from the old 18th century
German "Ulmer" pipe, which in turn has echoes of medieval bagpipes.

『18世紀ドイツの "Ulmer Pfeife"(pipe) に由来する(語源)』 とあるのですが
『ウルメル・プファイフェ』だと云われても,肝心の『ウルメル(orウーマァー)』 が分らない. しかたなく,辞書を引きました (^_^)

似たような綴り字の単語を 書き出してみます.
アクセス独和(平22・三修社)では次の二つ
Ulm:ウルム(バーデン・ヴュルテンベルク州の都市)
     *注 氷河期名の”ウルム(ヴュルム)はWürmです.
Ulme:ニレ(楡),ニレ材
木村・相良独和(昭45・博友社)では 次の二つ
UlmまたはUlme:縦坑の横壁 (*鉱山で使われる用語とあります)
④ ②と同じ

結局,三つの語が出てきました.
パイプ(Pfeife)の属性を調べると,女性なので
-er(-r)は形容的に繋げる時の語尾(女性・G格)と見做せば
文法上は,どれからでも"Ulmer"が作れそうです.

もし,"Ulmer" が あの特徴的なシェイプの類似例を意図したのであれば
18世紀のドイツでは,それを 『鉱山のタテアナ(縦抗)のようなパイプと呼んでいた』と云う解釈が良さそうに思えます.

”楡製パイプ”も捨てがたいのですが,A.Dunhill はThe Pipe Book
『ドイツの農夫はdwarf-oak(矮性のオーク[カシワ,ナラ,カシ]で作った』
と書いているので,樹種からみてもハズレでしょう.

oldbriarsさんのコレクションでOom Paulを見た記憶があったので
探したところ コモイのGrand Slam#235の詳しい解説がありました.
そこに 『Commoy'sでは OomPaul を Kruger と呼称』とあります.

"Kruger"が ドイツ語綴りに見えたので,ついでに辞書を引くと
Krug:(本来は柄のある土製・陶製の) つぼ,かめ;
     (蓋と柄のある) ビール用ジョッキ; 方言で居酒屋 
     などがありました 
    (*以上は木村・相良独和, -erは語尾としておきます)
    
こちらは,まさにそのものと云った感じがします.

ところで,Paul には ”人名” 以外の連想が働きません.
(Tabak)Pfeife からは どうなまらせても Paul が作れそうにないので
二つの単語を合わせると,結局のところますます分らなくなりました.
(年末に閉まらない記事で恐縮です)
             *
閑話休題
鉱山ではありませんが,日本で深い縦抗(タテコウ)が掘られているようです.
クリスマスイヴには,地下460mに達した↓ とのこと.
(独立行政法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター).
                          **

追記(2011/01/05):
黒時計連隊さんから
『ウルム地方で独特な形のパイプを作っていた』との記述がある資料を
教えて頂きました。(Ulmは,Wikiによるとアインシュタインの出生地)
18世紀中ごろからドイツ語圏でUlmerパイプという呼称が使われ始め、
19世紀末か20世紀初頭に 人名Paul Kruger由来の呼称”Oom Paul”が
英語圏で?Ulmer とは独立して使われ始めた-と云うことのようです。
後者の人名の経緯については、解説文を付けて頂きました。
タバコパイプに興味のある方は、コメントを参照して下さい。
        

コメント

_ 黒時計連隊 ― 2011/01/04 14:52

初めてメールをいたします。もしお役に立てればと思います。
Ulmer Pipeですが、2009年に「たばこと塩の博物館」で開かれた「やすらぎのオーストリア」展にて実物が展示されていました。この展覧会は「オーストリアタバコミュージアム」の所蔵品を展示したものでした。
そのカタログを見るとUlumer Pipeについて、
「17世紀末から、人々は木製パイプを用いるようになったが、同時期、ドイツのウルム地方では独特なフォルムのウルム形パイプが製作されるようになった。このパイプは、18世紀半ばには、ヨーロッパ中で受け入れられるようになった。ウルム型パイプは、ヘルメット状の銀のフタ付で木製であるが、メアシャム製のものも多く見られる」
と解説されております。カタログには木製のものとメアシャムのものが載せられております。たぶん、このカタログは博物館に注文すればまだ入手できると思います。

また、Oom Paulの由来ですが、ボーア戦争時のボーア側の指導者がPaul Krugerでした。
Oomは彼ら(アフリカーナ)の言葉でUncleを親しみを込めた意味で使った言葉とされています。Oom Paulは「ポール小父さん」と云う意味なのでしょうか。つまりOum PaulとはPaul Krugerを意味しております。そのPaul Krugerが使用したシェイプと云われております。
ネットでOom Paul Societyを見ると、そこに歴史が書いてあります、参照してみて下さい。
もし、何らかの疑問にお役に立てれば幸いです。

_ ignis ― 2011/01/04 20:15

ご丁寧なコメントをありがとうございます。
<たばこと塩の博物館>HPで刊行物コーナーに、”やすらぎのオーストリア”(¥1,000+〒340)があったので、早速取り寄せます。
<Oom Paul Society(OomPaul com.)>については、記事公開後に検索して見つけ、history#1,#2,#3 が書かれていることに気づきましたが、まだ読んでいません。
紹介して頂いた人名起源は納得し易いところです。
Ulmer云う呼称とOomPaulという呼称は、それぞれ独立して使われ始めたようなので
両語を無理に関連付ける必要はなさそうですね。

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