古典紹介 (3): The Modern Briar. by A.Dunhill,"THE PIPE BOOK."14.pp 240-248.1924)2009/12/09


古典”THE  PIPE BOOK” の復刻版から、その14章を読もうと思います。
The Pipe Book
図1 装丁と本文の様子。Alfred.Dunhillが54歳頃(1870年生まれ)、初版はおよそ85年前。

  同書は1924年に発行された。手元にある本(図1)は、1999年に著者の孫であるRichard Dunhillが序文を書いて、The Lyons Pressで編集、2000年にGramercy Booksから出版されたものです。目次を以下に示します。
...Contents...
Preface by Richard Dunhill
Foreword
Acknowledgment
1.Why Men Smoke                                   
2.Makeshift pipes and Tobacco                  
3.Straight or Tube Pipes                          
4.Mound Pipes                                       
5.Indian Pipes and Pipe Mysteries               
6. Smokers and Non-Smokers of South America
7.Pipes of the Far North                          
8.Some Far Eastern Pipes                         
9.Water Pipes
10.The Myraid Pipes of Africa
11. The Myraid Pipes ofAfrica(continued)
12.Clay Pipes
13.Some Choice European Pipes
14.The Modern Brair
index
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第14章の全9段落の内容を、ノート形式で書きだします。
第1段落:ヨーロッパのパイプ材料について
 土質パイプと木質パイプ及び金属について、素材の性質や長所短所を簡単に記したのち、ブライヤーが登場するまでに使われていたパイプ用木材の例と特徴を簡単に述べている。
 『クレイパイプとメシャムパイプは両方とも、煙が冷たくて香りよいという絶対的に有利な性質をもつ反面、脆さという解決できそうにない欠点をもつ。鉄や 銀のような金属は耐久性はあっても、熱伝導度が大きいのでパイプが直ぐに熱くなる。また重量が重いという欠点もある。これに対して木材は、軽いこと、耐久 性があること、熱伝導度が小さいことなど、パイプ材として三つの優れた要素をもっている』
 また、自身の製作試験の結果を踏まえて、そのころ使用されていた木製パイプの特徴について次のようにまとめている。
1)桜:始めから喫味は良いが、カーボンが着きにくい。加工・細工がしにくい。
2)アーストラリア・アカシアとコンゴ材:  普及しなかった。
3)矮生オーク材:根を加工。 熱に強くて焦げにくく、シュバルトワルツ(ドイツ:黒い森)地方で、メシャムが登場する前から使用。

第2段落:コーンパイプについて
 アメリカのコーンパイプについて記述している。主要な生産地はワシントン州、ミズーリー州ほか、中西部の穀倉地帯。パイプ製作に向いたトウモロコシが栽培されていて、年間2700万本のパイプが作られている。
第3段落以降は、ブライヤーパイプの誕生から20世紀までの発達史をやや丁寧に記述。

第3段落:ブライヤー・パイプ誕生の逸話
  ナポレオンⅠ世の没(1821)後、20年くらい後(1840年代)に”復古ブーム”が起きて、生地コルシカ巡礼が流行った。あるフランスのパイプ職 人*)が巡礼に参加し、メシャムパイプを持参した。滞在中に無くすか壊すかして、現地の農夫に代用品を頼んだところ、それが”ブライヤー製パイプ”だっ た・・・。パイプ職人は気に入って、そのパイプと原材料をフランスに持ち帰り、取引先のセントクロードにあったマウスピース工場に送って、パイプを作らせ た・・・・。
 こんなきっかけで、”ブライヤーパイプ”と”パイプ聖地・サンクロード”が生まれたと云う話。注*)本文には”何製”との断りがありません。(自分が作った)メシャムパイプだと思います。

第4段落: セントクロード(Saint-Claude)の産業発達史といった内容。
  村がジュラ山脈の深い谷間にある関係で、人々は夏場は主として林業や家畜を飼って生計を立てていた。冬期には雪に覆われて仕事ができず、自家用の小道具を 作る程度のこと以外に、することがなかった。ところがある頃から、修道士たちがロザリオなどを”工芸品”仕立てにして、村祭りなどで売るようになった。そ れが収入になると分かって、農夫たちも色々な小道具類--樽の栓、糸巻き、たばこ入れ、木鉢など--を作り、”冬場の稼ぎ”とするようになった。
 この”木工ろくろ細工”は、当初は家内制手工業といった程度のものであったが、18世紀に入って”(メシャムパイプ用の)軸”作りの注文が来るようになり、規模が拡大する。・・・やがて、谷間を流れる急流を動力源として大がかりな旋盤や研磨機を使用するようになり、工場生産方式へと発展してゆく。

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(注)セントクロード市のオフィシャルサイトです。トップページの一番上に、パイプ加工中の写真が現れて、”ある種の期待”を抱かせる。が、数秒で風景や人々の暮らしぶりと云った”至極あたり前”の電子紙芝居に変わってしまう。
 ページ右上にある検索窓に、”pipe”を入力すると、”町の歴史コーナー”に入り、5世紀頃からの歴史が綴られている(ようです)。パイプの話題は町の歴史として、第四期に登場。写真は一こまのみです。(続きを ”見ようとする” と、写真がモザイクになってしまうので、本文の暗号を解読する意欲が無くなります。それでは、本題に戻ることにします)
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第5,6段落: セントクロードにおけるブライヤーパイプ作りの現状*)
 上記のようにセントクロードには元々、”ろくろ加工技術” が根づいて いた。そこに偶然、ブライヤー製パイプを作る幸運が訪れて、その後の主要な地場産品となってゆくが、初めから順調に進んだ訳ではなかった。ブライヤーは元 々が”木のこぶ”であって”節”や”ひび割れ”の多い材料である。加えて個体差が大きいなど、木工加工材としては扱いにくい材料であったので、幾多の試行 錯誤が繰り返された。やがて”初期の乾燥処理”に成功し、加工技術も次第に熟達した。
 現在のパイプ工場は、フランス政府の後押しにより、機械の 動力源を水力から電力に変えて大規模化され、村の人口14,000人に対して5,000人の雇用を創りだした。特に女性に対して、”火皿磨き”という新た な職種も生み出されている。パイプの生産量は年間3,000万本であるが、フランス人自身はパイプ煙草よりもシガレットを好むことから、セントクロードの パイプの90%は輸出されている。特に英国は政府統計で、毎年2,500万本を輸入している。注*)現在は1924年のことで、第一次戦後の復興期。

第7段落: ホワイトヒースの生育環境、dead-rootについて
 about Smoke に、重複した内容でより詳細な記述があるので、ここでは省略する。

第8段落: セントクロードにおけるマウスピース製作の小史
 ジュラ山地で家畜を飼いながら暮らしていた人々の中に、獣の角細工を副業とする人々がいて、古くから高級パイプ用に象牙やコハクのマウスピースを作っていた。
  ブライヤーパイプが主流になって生産数が増大するにつれ、安価で良質なマウスピース材が求められるようになった。1878年にイギリスのある工場でエボナ イト製マウスピースが発明された。しかし第一次大戦までの主要な生産国は技術力に優れたドイツで、独占的に生産された。大戦中にドイツからのマウスピース の供給が途絶えると、セントクロードがその供給源となったセントクロードはパイプ用品としてだけでなく、電気器具のパーツ生産も行って、エボナイト産業の 確固たる地位を確立した。

最終段落: 全文訳です。
 『極東アジアにおける喫煙者たちの前史については、我われは殆ど知らない。 また彼らの使用したパイプも殆ど残っていない。アメリカ大陸における先住民の数千年に及ぶ喫煙の歴史はパイプを発達させた。それらは時には入念に仕上げら れているが、普通は不格好なものでありパイプの多くの部位に粗粒な陶器や小石の装飾が付けられている。ヨーロッパにおけるパイプ製作者たちは、初期のころ にパイプ装飾を捨て、約400年かけてパイプ製作術を完成させた。
彼らの到達点は、”単純のパイプの完成”である。入念に飾り付けられたパイプは、大きさと形が無骨であって、幼い子供(the young)や無教養(the semi-barbaric)な人がもつものである。
 20世紀のパイプ愛好家(connoisseur)は、自分のパイプには自然に養生された(self-seasoned) bruyèreと、優秀な職人が作った単純なバルカナイトマウスピースからできたパイプを選ぶ。つまりその種のパイプとは、全体の均整が取れていて、とりわけ小さな穴などがない繊細な木肌の美しさを持ち、木目が柾目のパイプである。』  
以上 ( Feb.22)