Briar_Note (4/x): The Making of Briar Pipes (2)2009/12/05

お断り
工場でパイプがどのように作られているかに関心がある方は下記の『深代パイプ工場を訪ねて』(参1)を閲覧される方が、全般の正しいイメージが得られます。このNote記事は、ダンヒル父子の用語調べと整理を目的としています。

Ⅱ編   研削工程と仕上げ工程
 はじめに
2008年4月末に『ダンヒルのキュアリングに関する考察』(参2、以下『D考察』)により、A.ダンヒル(1918:US.Pat13418)の開発した加熱・乾燥器の全体像と、”Shell”を作るサンドブラスト工程の前処理の概要が明らかにされた。また続く5月初旬の『サシエニのキュアリングに関する考』(参3)により、J.サシエニ(1919:GB124410)が独立した(参2、以下『S考察』)際に開発した加熱・乾燥器の機構が明らかにされた。

A.ダンヒルの特許文書に記載された内容は、H.ダンヒルの5章に対比すると、その7節に相当する一つのパイプ製作法を詳細に記述したものであることが分かる。それはパイプ製作の全体工程に位置付けると後半部分である。『D考察』では特許文書から、次の4工程を抽出して整理し、解説されている。
 1.通常通りのブライヤーの研削
 2.植物油、もしくは鉱物油に漬け込む作業
 3.加熱装置による処理
 4.サンドブラストによる表面の仕上げ
<通常通りのブライヤーの研削>は特許に値する作業内容がないのか、特許文書に
具体的な記載はなく、したがって『D考察』でも詳しくない。
 この記事は、”The Gentle Art of Smoking”第5章に沿って、<通常通りのブライヤーの研削>の手順を見学してみようという内容である。<研削>は下の目次の3-6節に相当する。<2油漬け---4ブラスト~工程>は7節に該当する内容である。3-7節を順に辿ってゆく。

原書の目次
Ⅴ How Pipes Are Made (p93-113)
1.Briar Root,(p93-99)  2.The Making of Briar Pipes,(p99-101)
3.Bowl Turning,(p101-104)  4.Stem-Drilling,(p104) 5.Grading,(p104-105) 
6.Preliminary Polishing,(p105-106) 7.Making the Pipe,(p106-109)      
8.Clay pipes,(p110-112)    9.Meerschaum pipes,(p112-113)
参考文献とHP
1)『深代パイプ工場を訪ねて』(シリウスたばこHP)
->http://www.tabako.co.jp/hukashiro/index.html
2)sq_bull 2008:『ダンヒルのキュアリングに関する考察』..England's best pipe value,http://sqbull.blog120.fc2.com/blog-entry-64.html
3)sq_bull 2008:『サシエニのキュアリングに関する考察』..ditto、http://sqbull.
blog120.fc2.com/blog-entry-65.html
4)團伊玖磨、1967:『ダンヒルたばこ紳士』(朝日新聞社,但し絶版)
5)Liebaert,A., & Maya,A. 1994: The birth of a pipe. ”The illustrated history of
the pipe”, Harold Starke Pub.Ltd. pp64-101.
6)フランスCourrieu社のHP (注:写真がやや小さい)
->http://pagesperso-orange.fr/ch.courrieu/fabrication2.htm
7)Dunhii Ltd 1927: about Smoke.,(Fine Pies InternationalのGallery参照)
8)梅田晴夫 1973:パイプ美術館, 東京書房社. 
9)A.Dunhill 1913: Improved Process and Apparatus for Seasoning and Finishing Tobacco Pipes...(GB191302157).: after esp@cenet
10) A.Dunhill 1920:(US1,341,418)は『D考察』で紹介済み。
11) A.Dunhill 1921:(US1,383,193);Apparatus for seasoning and finishing tobaccopipes.... after esp@cenet.
*こちらは器械の構造、取扱書き。オイル浸漬やブラスト処理の記載はない。
参12) J.Sasieni.  1919:Apparatus for seasoning and finishing tobacco-pipes..
 (US1383193).. after esp@cenet.
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【講 読】 

3. Bowl turning
 (参4訳: 雁首作り
 この節では、主要な機械3種をあげて作業順に解説している。本文の記述は実写版と
いったところ。以下には本文の記述順に step-番号を打ち、各ステップに該当する挿入
図を複写して配置した。なおカラー写真はすべて参5)から複写で、挿絵に対応するものを選んで右隣りに配置した。
step-0:ターニングの予備作業(回転鋸でブロックから概略のパイプ形に切る.)
(>挿絵なし)
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step-1:bowl-turning machine ( machine à ébaucher ): 側面と火皿の整形
bowl-turnig
Figure 1: a) The bowl-turning machine.after Dunhill,A.H(1954)
             b)  The bowl is turned outside
             c)  The bowl is turned inside.
        b,c): at Genod company, Saint-Claude, after Liebaert,A & Alain,M,(1994)

図注)原文には機械名(=作業の呼び名)が仏語(荒削り機)で併記。
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step-2:stem-turning machine ( machine à varloper ) :ステムの整形
stem-turnig
Figure 2: The stem-turning machine.after Dunhill,A.H(1954).

図注)原文には機械名が仏語(長鉋カンナがけ機?)で併記。
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step-3:third-machine            ( machine à fraiser ) : ボウル底の整形
bottom-shaping
Figure 3: a) Shaping the bottom of the bowl.after Dunhill,A.H(1954).
             b) The fraising, after turning the stem., at Cuty Fort, Saint-Claude
                                                            after Liebaert,A & Alain,M,(1994)

図注1)原文には機械が無く、仏語(フライス盤)表記のみ。Cuty FortはGroup名。
図注2)削り刃の形に時代の差が見える。
図注3)ステムの根元の両側に羽のようなバリが残る。これは手作業で取るか別の機械
により整形するとある。なお現代St.-Claude の写真例では、次のstem-drilling の後にこのバリ取りを行っている。

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4. Stem-Drilling ( machine à percer )      (参4訳: 軸の穿孔
 本文に挿絵なし。スライド式の台にボウルを伏せて固定。回転する錐に向かって
台を移動させてステムに孔を通すと書かれている。基本的に下のSt.-Claude の写
真例と同じように穿孔していたと思われる。

stem-drilling
Figure 4: The drilling of the draught hole. after Liebaert,A & Alain,M,(1994)
(draught hole:直訳で通風孔)

図注)原文での仏語機械名は孔あけ機。

 本文を転記
......................... The drill is lubricated from time to time and  the process continued untill the bore just reaches the base of the bowl.
この lubricateを 團伊玖磨(1967)は、『錐には絶えず油を喰わせながら..』と訳している。私見では:切削液が本当に”油”だったかは疑問。仮に真水であっても冷却効果はある。ブライヤーは浸透した水で多少は軟らかくなるはずなので、精度よく穿孔する目的は達成できると思われる。  (一般訳は lubricate=> oil,grease のようです)
参考】
機械作業が終わり、手作業により整形する
バリ取り
Figure 5: The operator uses a specially designed rasp for briar, which he may have made himself. after Liebaert,A & Alain,M,(1994).
 CutyFortグループの工場では、ボール作りの機械工程が15作業、上の手作業が16番
目の工程とある。ダンヒルの原文では、上の整形作業は 6.節の冒頭で触れている。いずれにせよ、機械作業によりパイプの基本形(粗仕上げ)は完成した。
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5.Grading   (参4訳: 類別
瑕疵のあり・なしに2分類され、さらに夫々のカテゴリーで3グレードに分けられる。
1) clean bowl:  フローなし >>>   3 grades
2) flawed bowl:  フローあり >>>   3 grades
ターニング完了段階で見つかる”きずや穴”は、比較的小さいものが多いのでパテで埋め
て補修する。当然、大きなものは廃棄される。自社でボールを作らないパイプメーカーは、粗仕上げ品を扱うマーケットから仕入れることになる。そのため製品の品位は、マーケットで供給される粗製品のグレードに影響される。
 これ以降の作業をH.ダンヒルは、finishing processes 仕上げ工程と呼んでいて、メーカー各社によって内容や手順が様々で、秘密事項が多いと書いている。
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6. Preliminary Polishing (or initial polishing) (参4訳: 磨きの下拵え
 ここから手仕事による最終工程である。
step-1 polishing の予備的な作業として、coarse sandpaper wheel でstem の付け根 に 残るバリを取って、ボール表面の不陸を無くす。
step-2  軽石粉末を油と混合して研磨剤とし、フェルト盤に塗りつけて磨く。 この作業 は原文では、次のように書かれている(下に原文を転記した)。
step-3  木目がハッキリしたボールを検査して、<木目の良し悪しによる等級>付けを
行う。 1グロスのroot材から perfect(無瑕疵で木目が良い)ボールは2~3個。
step-4 安価なパイプについては、出来合いのマウスピースを付けて摺り合せる。
 
研磨のところの原文転記
   They are then polished on felt wheels with the aid of fine pumice powder mixed with oil.  Such work helps to reveal the natural grain and so assists the next stage of selection.
<水溶きパミス>でも研磨作業は可能であろう。ダンヒル社では <木目だし> を目的として <油> を使用したようだ。<油磨き> により明瞭になった木目を観察して<最終的なgrade> を判定し、パイプ毎に仕上げタイプが決められた。木は脱水が進み、さらに樹脂が抜ければ普通、木目は薄くなる。  
現代の深代製作所で使う研磨剤は <泥磨き>。 訪問記でははっきりしないが水性の
ように見える。

<pumice powder>は訳文で、軽石を砕いて粉末を作り、油に溶いてフェルト盤に塗ったとしている。日本では1960年代の中ごろまで、火山灰(広義のpumice)を精製した<歯磨き粉>や<磨き砂>が市販されていた。もともと粉末状であるので、日本産のパミスであればフルイにかけたり水簸(スイヒ)で調整すれば、パイプ磨きに使えるモノがある。研磨を湿式で行う時に、溶剤は水、油の二通りがある。乾式を加えれば三通り。どの方式とするかは、次の塗色や最終磨き、艶出しのやり方で決まることだろう。

ダンヒル社の油磨き方式は秘密に属することでもなく、他社でも普通に行われた方式の
ようである。当然のことながら、磨き終えたボールの外表面には油が浸透している。その浸透した油が、完成時のボウルにどのように残り、喫煙時のどのような影響が出るか、あるいは出ないかは問題として残る。この点に関しては本文に言及がない。 
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7. Making the Pipe 
原文は3ページ余り、8パラグラフからなる。パラグラフ毎に話題が飛んでいる。パラグラフ毎に適当にピックアップしてゆく。

 1)  The final processes depend very much on the quality of the pipe in question. との書きだしで本文が始まる。販売価格に応じた工程であり、安価なパイプには高価なもののようには手を掛けない。

2) マウスピースは高級品には手彫りを、普及品には型枠加工品を装着して磨り合わせる(油パミス研磨盤による)。普及品はその後、着色して(stained)、ニスがけ(varnished)、布(mop)で磨いて艶だしをして、完成する。安価なパイプの中には、suitable milling cutterで削って凹凸を付けて仕上ることがある。原文は次の通り。
 "When,in the cheaper grades of pipes, a crusty or gnarled appearance is required,the bowl is roughened on a suitable milling cutter before the finishing stages begin."
【参考】マウスピースの曲げ加工の様子; 60℃に加熱して曲げる(エボナイト場合).
マウスピース加工
Figure 6: Bending mouthpieces, which are first heated to 60 degrees Celsius   then bent by hand and finally cooled in cold water to retain the curve.
 at Chapuis-Comoy(Chacom pipes). after Liebaert,A & Alain,M,(1994).


3)  シェルに関する記述。
 In a more elaborate and expensive process, requiring heavy and specialized equipment, the natural grain is preserved in pipes with a roughend appearence by subjecting the bowls at an early stage to the effects of heat and of high-pressure sand jets. The soft wood is thus removed and the hard grain stands out in bold relief. after such treatment, the bowl is both light and tough.*)            *)See plate 9 

Shell
Figure 6. Pipes roughened by heat and sand(Plate 9)   after Dunhill,A.H(1954).
図注)ダンヒルは”Shell”と商品名は使っていない。訳本では、高級品については”シェルと呼ばれる”と解説している。
疑問点>> early stageは、どこまで前なのかが、はっきりしない。最も早い段階を想像すれば、stem-driling の前か。その後だとgradingの後。

4) フローのないボウルについては、限りなく手間を掛けて仕上げるが、やり方は工場によって様々。企業秘密が多い。30工程の作業が行われることもある。
5) 
高級品については、ボウルの内側も布(mop)で磨く。ボウルの着色は、briarが元々硬いことと、幾多の乾燥処理(seasoning process)を受けているため、他の木工品
に比べ
て難しい処理である(塗料をハジクの意味か)。 艶だしは、自然の木目の良さ
を引き出すことが目的である。しかしある段階で、木目を強調するための着色と磨きをかけることもある。油磨きだけの仕上げ予定が、思ったほど良くならなかった場合のことだろう。

6) The Bruyère に関する記述
    Various seasoning processes may be employed, some of which make use of nourishing oils, and are followed by drying period which leaves the pipe bowl with hard, permanent finish. It is then ready for fitting with a first-class hand-cut mouthpiece. ....
ボールに浸透した油を乾燥させる..は、シェルを作る予備作業としての油に浸すこと(参2)とは、異なった文脈で記述されている。about Smoke(参7 )のThe Bruyèreの記述(当ブログのreview2)を参照すれば、この文が ”The Dunhill Bruyère Pipe”の仕上げを指すことは明らかだろう。
 ダンヒル特許文は、shellの前処理にポイントを置いて書かれている(参2)。”about-Smoke” のカタログでパイプのカテゴリーを見ると、The"Shell Briar"にあてられたページ数は約1割に満たない。当時はスムースな仕上げのBruyèrePipeが主流(参8)。従って加熱・乾燥器は、発明当時は主として多くのBruyereを仕上げるために役立ったものと想像される。本文はこの後、高級パイプ仕様のマウスピース作成に移る。 -省略-

7) マウスピースの口元側加工(原文でbuttonボタン、日本の入門書でティップ)の加工
に関する記述。 -省略-

8)
 最後のパラグラフ

 最終仕上げは、ブライヤ-がもつ本来の美しさを引き出すことが目的である。製品の完成検査をする専門家は、製品がメーカーのプレステージに相応しいレベルのパイプであることを厳密に検査しなければならないと結ばれている。9章に付加記述があるとしているが省略。

以上で5章の講読は終了.............................................................................
まとめ 
  "The Gentle Art of Smoking"を、ダンヒル社のパイプ作りをベースに書かれてたというあたり前の前提で読むと、1950年代には、パイプを作る時に油を使う目的は三通りあったことがわかる。それぞれ次の通りである。

1: ボウルターニング後の予備的研磨
2: Bruyèreのボール表面磨き、艶出し 
3: Shellのサンドジェット前の予備処理

 時代を遡って、A.Dunhill特許文書(参9、10)を読むと、冒頭で次のように記している。” In the manufacture of tobacco pipes, from briar and other woods, it is often advisable to employ oil in the preparation and finishing of the pipe, but such employment.
 これは米英の両特許文書にみられる冒頭の一節である。ここでのpreparation は上記
の予備研磨 (preliminary polishing)を、finishing はBruyère の艶だしを意味することはabout Smokeの記述(参7)からみても間違いないだろう。
 Shellの予備処理である油浸漬は、本文の記述 at early stage から判断するとfinishingではなく、preparation の一つであろう。
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付記:【簡易試の結果
 このノートを作りながら、『D考察』と『S考察』を読み返した。ダンヒルの特許文書の記述で最も不可解なことは、油の浸漬時間がseveral weeksとあること。 全乾状態に近く、樹脂もある程度は抜けた、厚さ5mm~1cm程の薄板に、なぜそれほどの時間が掛かるのか。
この疑問は、初めて『D考察』を読んだときから今日まで残っている。
 ブライヤールートを12時間煮沸をした後に、エボーションが整形される。煮出し作業は生木のsapを分解・溶出させる作業でもある。sapは精製すれば油である。抜いた油をパイプ形成後に、”なぜ” 戻したのか。脱水・脱脂により何らかの不都合が生じているから油を戻すと考える以外に、合理的な説明はできないだろう。
 ・木目が薄くなる
 ・塗料のノリが悪くなる
 ・ボウル表面の粘弾性が少なくなり、ひび割れが生じやすい
などのマイナス面が顕著になったためと推察されるが、これらは主に外表面の問題である。なぜ一か月近くも掛かったのか。粗度の荒いボウルの内側が油に浸されていれば数日もあれば十分であろう。しかし表と裏側の両面から油脂を還す必要があるのか?
 
 今年の五月に、入門用に購入して放置状態のパイプのボウルをヤスリがけして4つの小さな平面を作り、サンドペーパーの#600と#1000で、それぞれ油磨きと乾式で計4タイプの試験面を作った。表面の粗度と浸透速度の関係を簡単に調べる目的で。
 試験面以外はワックスが掛かったままである。ステムはやすりでは八角柱に削り、#300くらいの粗い面にした。ここまでの作業で、#1000+油磨き面には硬化した(ゲル化?)皮膜ができることが分かった。皮膜の厚さは簡易スケールを当てると0.1~0.2mm程度。透明で木目はよく見えるが艶はなくこの状態のままでは売り物にはならない。
  次にボウルの口を適当に密栓してオリーブオイルに漬けた。マウスピースはビニテ巻き。半日程で栓が緩み、ボウル内に油が入った。内側にはカーボンと”やに”が付いていたが油は簡単にブライヤ-全層に浸透した。ステムは、外側の荒削り面からの浸透よりも、ボウル内側からの浸透が速かった。二日目にはパイプの木部が油で飽和されることになった。
 研磨面の粗度により油の浸透速度がどの程度違うかを調べる試験は、失敗に終わった。紙で油をぬぐって放置。半年後の現在、油臭さは大体は抜けたが、かすかに残っている。何度か煙草を焚けば実用品に戻るだろう。
 ダンヒルが計画した”油の浸透深さ”は分からないが、several weeksの意味は、
<油で研磨されて、硬化膜が形成されたボウル外表面からの浸透時間>と考えてよさそうに思える。 A.ダンヒルはブライヤ-パイプの内空面は油に浸さなかったと思う。H.ダンヒルは第9章パイプ馴らしの解説で、カーボンを早くつける方法を例示する。
そしてその終わりで次のように書いている。
Some Frenchmen use oil for this purpose,but by one Englishman, at any rate, the taste is not to be recommended.  (注: this purposeはカーボンをつける目的)

 サシエニの特許文書(参11)の模式図にはボウルが引っかけてあり、マウスピースは未だ付けられていない。一方、ダンヒルの図(参9,10)にはマウスピースが付いている。後者はBruyère の最終仕上げ=油の臭気抜きと見ることもできそうである。
 Shell の予備処理は、片面浸漬か両面かは別にして、サシエニ図のようにマウスピースを付ける前の段階では行なわなかった --- という推定に確たる根拠はなさそうである。

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あとがき
 ダンヒル社関係から出ている文書に < oil >は眼につくが、< curing >はパイプ製作に関連しては一語として登場しない。これは事実である。 
<oil> が <curing> と結びついて<oil curing> となるとき、それは5章冒頭の <rose briar> にどこか似てくる。-終-