愛知用水-水源探訪#032016/12/20

 愛知用水とは関係ありませんが、味噌川ダムの近くに奈良井ダム(長野県管理)があります。味噌川のご近所ダムであり、その湖岸道路(一般県道493号)が帰り道に利用できるので立ち寄りました。位置を下に、電子国土からSnipping Toolで切り出した地勢図で示します。小さいスケールが左下隅に置いてあります。 
木曽路のダム
 この図で左(西)半分は木曽川水系(及び飛騨川)、東側は天竜川水系で、どちらも太平洋に流れ出る。一方、奈良井ダムのある奈良井川は千曲川水系*で、木曾・天竜両水系の境に帯状に割り込んでいて、この帯に降った雨だけは北上して日本海へ流れます。この辺りの山稜に降る雨は、僅かな差で行き着く先が大きく異なるところが面白い。
注*)塩尻市の範囲が千曲川水系です。

なお、味噌川ダムの管理は長野県・奈良井川改良事務所です。
http://www.pref.nagano.lg.jp/naraigawa/jimusho/kanridam/narai.html

 ダムは南北に延びる谷間にあるので、到着した時にはすっかり日陰になっていた。冬至直前の日没が早い時期なので、目に留まったところを数枚の写真に記録し、パンフレットとカードを頂戴して、即、帰り支度。

 ざっと見て興味深かったことを簡単に書き留めておきます。
1)下流面一帯に草が密生。
奈良井ダム下流面
帰宅後にパンフレットを読んだところ:<法面緑化>です。
数10m程度の低いアースダムなら普通かも知れませんが、これだけ高いロックフィルダム(堤高60m)で、法長約150mの長大な盛土法面の保護が草だけ? 案外珍しい?

2)左岸斜面の中腹に得体のしれないコンクリート構造物がある。
フィルタイプダムなので、「そこに仮設備があったとは思えない」。
「なにか変な物がある」程度の認識で撮影した。
奈良井ダム堤頂及び左岸抑止杭
帰宅後の調べ:『奈良井ダム一般平面図』(1/2,500)によると<抑止杭工>です。
杭頭を連結するコンクリート構造物か?。「なぁ~るほど」と納得*(後述)

3)リップラップの色分け。
奈良井ダムリップラップ
初見の印象は、「水の滲みこんだ跡」。
しかしそれにしては・・セミ望遠レンズで見ると、そもそも岩石の色調が違っている。
上部の白い玉石は花崗岩類か? 貯水池内に花崗岩は分布していない?ようなので、別の場所から運んできたものらしい? 下部の黒っぽい岩石は現地にいくらでもある。全般に粒径が小さい。ドサッと撒いて、締めた印象。リップラップは一つ一つを積むものとばかり思っていました。こう云うのもアリか!
リップラップの材料
帰宅後の調べ:不明
色調の境界線が水平なので、設計水位を表現している?かなぁ~と思います。 
境の高さが洪水吐の越流レベルよりもかなり低そうなので、常時満水位か?
サーチャージ水位はEL.1,064.3m、常時満水位はEL.1,053.0m、差は11.3mです。
この種の工夫は初めて見ました。


4)ダム湖左岸の湛水斜面に、延々とモルタル?が吹き付けてある。国道361号を目指して走りながら、わき見運転で気が付いた。見晴らしの良いところで写したのが下です。
奈良井ダム貯水池
手前の大きな切土の先(下流)、水際に吹付の上端が連続しています。
右岸は運転中は当然見えません。この写真の範囲は自然地山のようです。
そもそも左手前の大きな切土は何?
帰宅後の調べ:不明

勝手に納得したこと*抑止杭について
 管理事務所で頂けるパンフレットの表紙写真-事務所のホームページにもある-を見ての推察ですが;
奈良井ダムパンフレット
 左岸の斜面に、平行な筋(線模様)がいくつも見えます。傾斜は40°前後でしょうか。
そこで線を下方に湛水面まで辿り、水際の形(斜面と湛水面との交線)に注目すると、カクカクと曲がっている・・・線と、平行な線の間の面、それに水際のカクカク線を立体的に再構成すると、下図の右のように、何枚もの板(本)を重ねた構造が浮かんでくる。どうも左岸全体が流れ盤構造をなしているように見えます。
左岸のモデル化
*注)赤い破線は線状模様の2つを例示(他にも多数)。右に、それぞれの破線が”板モデル”で対応する位置を示しました。
 パンフレットにある1/2,500平面図で等高線の形を見る限り、堤体付近に明瞭な地すべり地形はない。この抑止杭は既存の地すべりを抑止する意図ではないようです。
 左岸の山体に流れ盤構造があると予想されるので、抑止杭は堤体掘削の時に大規模な岩盤崩壊を引き起こさないように配慮した、予防的な対策と想像します-真偽不明。


木曾谷訪問の終りに
朝来た木曽路を戻らないで、伊那谷に抜けた理由は下のとおりです。
国道361号権兵衛トンネルを抜けたところで:
南アルプス北部の核心

伊那谷に下ってもう一枚:
甲斐駒から仙丈
甲斐駒にかかる雲が邪魔。

この風景に出会うことが
この物見遊山の第一の動機だったと、改めて思った。