兼山ダム見聞記#012017/01/05

1月5日木曜日、晴れ

現地見学;
昨年暮れに、愛知用水の兼山取水口を見学した。
その際に兼山ダム(かねやまダム)に関することで、現場では気にも留めなかったが、深夜に自宅で空中写真を見て、「これは普通ではない」と感じたことがありました。

好天に誘われ、越年疑問の手掛かりを探そうと午後から兼山に出かけた。
まず、見晴らしの好さそうな二つの山に登った。その眺望は;
兼山ダム#右岸から
写真1 絶景! 右岸の無名山(190.5m)からです。

ダムの両岸は河岸段丘。段丘面の標高はおよそ110m(5万分の1地形図による)。
背後の地形も興味深い。ダム疑問は解けなくても、まぁ~いいか!と云う気分。

次に、左岸の古城山(金山城址のある山:280m)からです。
こちらは、下から見上げても分かるように立木が多過ぎて、視界があまり良くない。
兼山城址から見た兼山ダム
写真2
*兼山、金山:此処ではどちらもカネヤマ。ただし飛騨川沿いの旧金山町はカナヤマ。
これくらいは、元々は広い意味での地元民なので難なく読めます。

山を降り、右岸の発電所脇の道路から、段丘崖の様子を眺める;
左岸下流の凹みの様子
写真3 向こう岸の凹み(ヘコミ)は、どのようにして出来たか?
換言すれば、ゴツゴツした岩壁のどこからどこまでが天然か-と云う自問自答。

双眼鏡を忘れる!
後に室内で拡大写真を検討するようでは、分かることも判ろう筈がない!!
現地での着眼点はいろいろあり、「ああでもない~こうでもない」と見飽きません。
長居すると怪しまれそうなので、ほどほどで切り上げます。

今日の印象:<外見上はほとんど天然。しかしそんな筈はない

余録:
二つの山の道筋はチャートばかりです。
堤体周囲の岩盤と川岸には、チャートの他に砂岩やその他がありそう、ハッキリせず。しかし、今渡ダムのような新第三紀層は此処には無さそうだ。


帰宅してからの文献資料を読む;

1)可児市史には: <昭和14年兼山ダム工事始まる。昭和18年兼山ダム完成>
         何もないよりは良い-程度。
2)間組百年史には: 兼山のかの字も出てこない。(発電所位置図にはある)
 昭和13年に電力関係4法案公布、昭和14年に国策の<日本発送電株式会社>が作られた。それで兼山発電所は、日本発送電の管理下で間組?により建設されたと思っていました。今渡発電所は1)にも2)にも長々と述べられているが、兼山ダムは真っ暗闇

3)兼山町史には: ネットに目次リストがあり、<兼山ダム・・384>がある。
         1ページに満たない分量ですが図書館が開いたら探すことにする。  
4)古い地形図では: 国土地理院<地形図・空中写真閲覧サービス>を参照した。
 『ダム建設前の地形図に、左岸は凹んで描かれているか、まっすぐか!?』

サルネイム画像をSnipping Toolで切り出す。
大正11年5万図「太田」
図1 明治44年測量、大正4年発行の5万図に、おおよそのダム地点を赤い矢印で。
印象:<凹みは無さそうに見えるが、よくわからない

明治35年測量による2万図では; <・・・、無念!>
明治35年測量2万図太田
図2

5)古い空中写真では;
左は一番古い空撮で、GHQ占領下の米軍によるものです。撮影縮尺は1万6千。
解像度が良く、細部まで見える(隣接写真と2枚をプリントして実体視するとよいが)
右側は現代版で、参考までに並べた-と云う程度です。
兼山ダム付近の古い空中写真
図3

昭和24年はダム完成直後とも云える時期、これを拡大して下に示します。
単写真の読みですが;
<赤い矢印から下流の段丘面と段丘崖に、掘削工事の痕跡は見えない
(段丘面の縁に、比較的大きな樹木が点々と生えています)
<白矢印で示した白点線の範囲には、掘削が入ったようだが、水際までは切り下がっていない>
ダムサイトの拡大写真
図4

結論:『建設時、左岸のダム軸から下流側では、掘削は行われなかった』
先に示した現地写真(写真3)に照合すると;
正面のコンクリート壁から下流の岩壁は、昭和14~18年間には掘削されていない


あとがき
かなりガッカリした、しかしまだ、天然と確定したわけではない!!
昭和が駄目でも、明治がある・・江戸時代も(笑)

ダム軸を上流か下流へ50mほど移せば、堤頂長は1/2で済みそう。
単純には、それで材料を半減させられる。そうしないで2倍の大きさとは・・・
基盤の地質条件?-普通は川幅が広いところほど悪いと予想される。

湛水後の水面で見る印象では-の話ですが;
ダムサイトの川幅が、上流や下流と比べて2倍になっている、2倍に作った?・・・
建設時、半分を締め切って半分で転流させれば、上・下流と同じ川幅が確保できる。
(段丘面の縁を辿ってみても、ダムサイト付近は凹んでいますネ)

段丘崖の形(平面形状)が、天然ものであれば、凹みの説明がかなり難しくなりそうな予感がするので、できるだけ人工であってほしい(笑)