今日は秋分、農業の一端を考える2016/09/22

9月22日木曜日・大安
今日は秋分、朝から百姓泣かせの雨。終日降り続くらしい。もし明日晴れても、田畑はグチャグチャ。腰椎が狂い始めているので、2日間は心おきなく骨休めができる。

9月7日付け某朝刊の一面と二面の記事が気に掛り、リサイクル待ち状態にしてある。
それらはTPP関連で、一面見出しには次のような文言が並んでいる;
農業改革 肥料値下げ促すーJA全農 高コスト批判に対応 銘柄数半減』
二面には;
小泉氏VS.全農「秋の陣」-農業改革 議論を再始動  構造 切り込めるか
付帯的なコラム(800文字の小論文);
競争欠くもたれ合いにメスを

TPP(環太平洋経済連携協定)とは;
1970年代の経験知に即して言い換えれば、
ヨタ車がン・シフィックで打ち壊されないようにするための協定」
これを
『1960年代中学校社会科』の滲みこんだ頭で考えると、・・・「それは正解」

それはさておき、そもそも
この紙上での農業改革は”コメ農家”限定版。一面に肥料費と農薬費、二面にはトラクター、コンバインなど農業機械費が俎上に上げられている。
この辺のことは、昔からよく見られたJA全農と自民党との綱引き合戦だろうと想像して、当方は関知せず。

両面の記事と小論の底流にあるのは、『日本の米価は高いから下げないとイケない。百姓が自分でコメを作り続けたければコスト低下を図れ』-と云う着想。
第2種兼業農家の私が注目したのは、編集委員・某氏の署名入り800文字小論文だが、これが読解不能、今日までその紙面を捨てられないでいた。それで読み直した。

小論文の核心は第4と第5段落だろう。第4段落で現状の分析、第5段落で問題の原因が述べられるが、その肝心かなめが分からない。それで第6段落に進むと、筆者は『兼業農家はコメ作りをさっさと止めろ!』と主張したいらしい-ことが分かった(笑)

第4段落は次の文脈で構成される。
農業には不合理な慣行が多くあり、機械購入がその一つだとし、筆者曰く;
①『田植え機とコンバインが1台づつあれば、100ヘクタールの水田を管理できる栽培技術がすでにある。』
②『田植え機でいえば1台あたりの利用面積は3ヘクタールを下回る。』
③『この構造が、どれだけ稲作のコストを引き上げているか計り知れない。』

第5段落が次のように続く;
④『問題の根底にはコストに鈍感で、利益を出すための経営スキルを高めてこなかった体質がある。』こんなことがずっと続いてきたのは
⑤『農業収入に頼らない兼業農家が生産者の大半を占めてきたからだ。』

農家は個人事業主ですから、雇われ編集委員氏より『コストに鈍感』で生き延びて来られた筈はない。特別な農家を除けば、農産物を販売して得られる年間所得は彼の足元にも及ばないだろう。農家はコストで稼げないところは、”生活の切り詰め” である。

少し詳しく見る。
まず①について;
その100ヘクタールは、何アールの田んぼを何筆寄せ集めて実現可能か? その場合、気象条件は無視して良いのか? など、『水田を管理する栽培技術』の実像が想像すらできない。

②について;
農林水産省の”農林業センサス*” によると平成28年度の農家戸数は専業39.5万戸、
第1種兼業18.5万戸で合計58万戸である。
編集委員氏がやり玉に挙げた私のような第2種兼業は68.5万戸で、農家の過半数を超えている。現代日本で1農家が所有する耕地面積の平均は1.9haらしい(中学生だった昭和30年代末の記憶は1.2ha)。

田植え機はコメ作りをするほぼすべての農家が個別に所有していると思われる。特に第2種兼業の田植えの基本姿勢は、”休日田植え”ですから、一台の共有使用は非現実的。
(私が1反で田植えを始めたのは約5年前で、初めは買うのがバカらしいの借りた)

さて1戸あたりの平均耕作面積は1.9haのところ、田植え機の利用面積が3haを超える算術計算などある筈がない。知らない統計マジックがあるのかもしれないが。

③について;
専業、第1種兼業、第2種兼業農家ごとの作付面積が分からないのではっきりしたことは云えませんが、③は①と②から単純に自明の帰結として導けることではない。

以下は、風が吹けば式の弁明であるが;
数多の兼業農家が、サラリー所得を流用して個別に農業機械を購入することで、販売台数が伸びた。それで機械メーカーは余裕をもって開発費に資金を回せるようになった。やがて機械性能が向上し、田植え機が実用化された?-これ、メーカーの社史では?

機械価格は、コストパフォーマンスを考慮すると下がっているように見えなくもない。田植え機で2条歩行式と4~5条乗用式を見比べると、歩行式が妙に割高なのは販売台数に差があるからでしょう。メーカー事情は知りませんが、今や農家都合の要請よりも機械能力が優り、私は逆に困っています(笑)

なにはともあれ、分不相応なまでに新品~中古の機械をあれこれ購入した私は、上の想像に基づいて米価コストの低下に貢献してきた-と考えている。
注)*農業センサスは maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noucen/index.htmlを参照。

なお件の小論文(エッセー)は周知の経済紙に載ったもの。
今日薄ら寒さを覚えるのは、秋雨せいばかりではなさそうだ。


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