ウルムパイプ#10 -パイプの特徴2011/09/10

いよいよ本論で
まず全体の外観について: 二つのタイプがある。

1) Der Ulmer Kloben (ウルム形 とでもしておきます);
Manger氏が<ウルムクローベン=ウルムの丸太造り>とタイトルを付けて取上げた、謂わば基本形。

図1は初期のタイプです (1737年の刻印が見える)。
4つのパーツ : 蓋,ボウル,ステム(仮称)およびマウスピースから構成されている。
蓋はチョウツガイでボウルに固定。ステムとマウスピースは相互に分離します。
ウルムパイプ原型
図1.  ウルムの”丸太Kloben”,1737年製 (Manger1998,p28)


2) Der Ungarnkopf (ハンガリー形とでもしておきます);
<丸太>とは別に章建てし、ウルムパイプの二番目のタイプとして取上げている。
Ungarnkopfは、訳せば<ハンガリー風の火皿(直訳)>。
Kopfの第一語義は<頭>ですが、辞書によっては<パイプの火皿>がでています。
修正: Manger氏命名としたのは誤。往時も今も一般に呼ばれてるそうです。 訳語をうるさく云えば、”火皿”より、ハンガリー風ボウルが良いかも知れません。

この種は1)よりも遅れて作られだした。もともとウルム地方のオリジナルではなく
オーストリア~ハンガリーで流行っていたメシャムパイプのコピーとも見えるものだそうで。
ハンガリアン
図2.  ハンガリー風の木製パイプ    (Manger1998,p38)
     左写真: 柄と銀の鎖付き。柄の中間で文字が刻まれている部分は銀製。
     右写真: 右側の多角柱状の柄は角製だそうです。
                    (訳すと、内容の割にコテコテした文になるので適当にしておきます)

写真を見るだけで
パイプが<ハンガリー風である>とは
<ボウル部分が円筒形である>ことだ- と分ります (私の感覚では)。
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メシャムパイプは、材料の原産地はトルコ(Eskisher)ですが
パイプに彫ったのは、200年くらい前、ハンガりーの靴屋Karl Kowates カール・コワテスだと、The Pipe Book(A.Dunhill 1924)に書いてありました。
もっともマウスピースは、バルト海沿岸を原産地とするアンバーがよく使われたとのこと。

次に内部構造:
下はManger氏のスケッチです。
図中の単語に次の訳語を当てれば、その役割が分ると思います。
Blechfutter= Blech + Futter= ブリキの  +(箱などの)裏張り
Holm=(斧の) (注:手で握る部分を指します、角製が一般的なようです)
   いわゆるマウスピース(Mundstück)は,図2で右上先端のL字型の部分。         
パイプ断面構造
図3 ウルムパイプの内部構造  (Manger1998,p51)


<Blechfutterブレッヒフッター>
要するに<ブリキの火皿>ですね。
ブレッヒは、他にトタンとか、総称的に金属の薄板の意味があるようです。
(金属の種類が厳密にブリキであったどうかは分りません)
火皿
図4 ウルムパイプパイプ用の色々な火皿  (Manger1998,p32)

実際に装着したところを上から見ると、下図になる。
火皿と蓋
図5 ウルムパイプのボウルトップの様子  (Manger1998,p32)
パイプのと、蓋の取り付け金具(四つの刻印が見える)、および
右端にあるマウスピースを差し込むソケット部分は、銀製だそうです。
刻印から銀細工師が分り、それが木製部分の研究にも役立つようです。

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ここまでの感想:
ウルムパイプの正体は,実はメタルパイプ -とも云えそうです。
磁器火皿を使うパイプは、火皿下部の柄(と言うか軸)の中に<水分溜め>が作ってあるそうです。ウルムパイプにはそれが無い(図3)。乾いたタバコ葉を使わないと、直ぐに火種が消えそうです。

訳文を整えるのが面倒なので、本文は、原文の引用無しで書きました。大部分が記載的な記述なので、誤解するような処は元々含まれていないと想像してのこと。                                      この稿終り