21世紀のイタリア紀行 by Pipen-Doge2011/02/20

Websiteの紹介
"Pipen-Doge"(http://www.pipendoge.de/)と云うウェブサイトがあります.
作家パイプ志向の方は,先刻御存じかも知れません.
ページ下のイギリス国旗を押して入ると,次の7つのカテゴリーに分れている.
1) Pipes,  2) Shapes,  3) Pipemakers,  4) Journeys & Notes,  5) Accessories,
6) Books, 7) Links
注:Dogeは古代VenedigとGenua共和国総督とあるので,パイプ総督の意かと・・

最近,お世話になっているのは上の4)と6)です.注目したのはパイプではなく
最も小さい記事の中に,これまでに最も見たかった写真の一つがあった.
"Journeys & Notes" 全17タイトル中,下から二つ目;
" Briar in Tuscany-Back to the Roots with Cornelius Mänz "
2002年のブライアー採取記録を2009年にアップされたようです.
記録写真が5枚と,そのショートコメントからなります.
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タイトルをクリックすると
いきなり英独変換が生じて多少慌てますが,写真の意義は分ります
場所と景観は,Googleマップその他で判ります(第1図).
ブライヤー採集旅行場所
第1図 ブライアー採取地の位置略図と周囲の景観(写真はqype.comから)

Pipen-Doge氏の記事によると,イタリアのトスカーナ州アンブラでシエナに隣接した処.qype.comの投稿者によると,そこに "Casa Bistino" (ビスティーノ・ハウス)と云う古い農家を利用した宿泊施設があるようです.
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当該ページの終りに
概ね『書面による許可なくして,抜粋を含むこれらの文書及び写真をダウンロードして
使用することを禁ずる』とあるようで,記事の所在を示してこの稿は終えるつもりでした。しかし一応メールしてみたところ,たいへん丁寧な返答(英文)を頂きました.
『典拠を付けて,御自由に』でしたので,”複写版”を作ることに変更しました.
以下,写真の書き込みは当方の添書き,原作者のコメントは和訳して 『~』で示しました.
     
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私家版 -21世紀のイタリア紀行- 原題は 『ブライアーに関する数枚の写真』

ヒースの枝切り
写真1 幹は3~(5?) 本のようです.

根こぶ掘り
写真2 根株掘り.写真の方が原作者のPipendoge(ピーペン・ドージさん)
ツルハシの背後にも,ヒースらしい灌木が見えます.10年生くらいでしょうか?

『かっと照りつける強い陽射しの処へ,実際にブライアーを探しに行くかどうかは
急いで結論を出さない方がいいです. とは云うものの,Cornelius Mänz(写真1
コーネリウス・メンツさん) と 私(写真2)は,出掛けてしまったんですが・・・・』
(場所は既述,C.Mänz;確かどこかで?・・Bisgaard pipesに紹介文)

ヒースの根こぶ
写真3 『発掘された根の部分・・・』

ルートの清掃
写真4 『・・そして,あれこれ話しながら収穫物の後処理を・・』

ブライアールート
写真5 樹皮を剥ぎ取ったサンプル
『・・そして,磨き終えた根株の部分(写真中のパイプは,Joan P. Solerさん製作)
この根株のすべてがパイプになるのではなく,残った部分は部屋の飾り(写真右)
にしたり,あるいはPlugs固形タバコのような薄板を作ったりする(写真左) ・・・』
                                                                                           -転載は以上-

Plugsはドイツ語ではなく,英語のプラグ<固形たばこ>でした(^_^);
Pipen-Dogeさんは,自前の<タバコ圧縮器>をお持ちのようです(下を参照)
"Accessories: A Tobacco Press for Hobbyists made by Daniel Jud "
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また "BooksThe History of Pipes and Tobacco" には,
"Die berühmten Ulmer Maserholzpfeifen"(美しい杢をもつ有名なウルムパイプ)・・・
この著者は,Anton Manger氏( Deutsches Tabakpfeifenmuseum 独語サイト)
     
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感 想: Tree Heathの生態について (cf.第1図,写真-1,2,3)
 一粒の種子からは1つの芽が出てくるハズですが,暫くして1本の幹の根元からシュートが発生して複数の幹が立ち,shrubが形成される-これが一般的な生態で,数本の幹の根元は地際では”株状”になる訳です.
 第1図と写真1,2を見ると,地形が丘陵なので,ある程度の表土層が発達していると思われます.つまりそこには根を伸ばし易い条件と,成長に必要な肥料条件が整っている.それで写真1の状態で放っておけば,切り株から再び芽が出てくるかもしれません.もし幹を切らなければ写真2の茎数を維持しながら,成長を続けると予想されます.十分な表土層がある処のヒースの根株は,一般に写真3のような形をしていることが想像されます.
 一方,硬い岩が露出したやせ尾根のような処で育つ幼苗は,肥料分が足りず,シュートを発生させる養分を蓄えることができないかも知れません.その場合は,1本の主幹を維持するだけになり,幸運にして老成できれば,マジョルカ島のような大木になる・・・・.
 あのようなやせ尾根では,十分に根を張らせることができない。その上に風が強く当り易いので幹の地際は,始終強いストレスを受けている.それで根元がコブ状に肥大化しやすいのだろうと想像します.幹が1本の場合の基部は,<株>ではなく,やはり<瘤コブ> が分りやすい.
註: 三光工堂(www.hidasankoudou.com/index.html)によると瘤の原因は,<ウイルス>,<ストレス>,<虫>,<その他>いろいろあるようです.
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ここまで想像を整理して
Loup Blanc氏のMonJura(//monjura.actifforum.com/)を見直す;
 ”球状塊”に幹の切り跡らしいものが一つ見えるので,元は2本立ちだったかもしれません.幹の直径と本数,そして樹齢を想定して見直すが,あれはやはり原因不明の異形.もうひとつの古く曲がりくねった樹は,マジョルカ島の老木と同じような条件下で育ったと思われる.
 あの老木の幹にはハッキリした <コブ状の変形> は認められませんが,内部の組織はきっと普通ではないでしょう.つまり瘤の素」ができていて,一部に<鳥目もく bird's-eye figure(参考図)> が発達しているかも知れません.

北海道産ハルニレのコブ断面
参考図1 ハルニレの瘤に発達した<鳥目もく> 
    北海道産で,製作は岐阜・高山の三光工堂.

ハルニレの顕微鏡組織
参考図2 ハルニレの断面組織.写真はElisabeth Wheeler氏.
樹種は参考図1と同じですが,産地は不明.

同じ種でも産地による組織の(見掛け上の)違いがかなりあるようです.
(註 『参考図1を拡大すると,参考図2になる』-と云う意図の引用ではありません)
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楡ニレは調べてみると,Elm(英通称),Ulme(独通称),Ulmus(属名),Ulmaceae(科名).
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 参考図1のサンプルはハルニレです.左下の幹の表面に<イボ>のような小突起が幾つか見えます.これが幹の内部にたくさんあって,横断面内に<濃い茶色>の斑状組織を作っています.つまり<鳥目もく>の正体は,イボの集合体に他ならない.この余計なものが体内にできると,その体積分だけ幹の外面が膨らむので,『あの木にはこぶができている』と見える。
  ブライアーのサンプル(cf.写真5,たばこと塩の博物館蔵)と上のハルニレを比較して,どんな違いを見出せるか? 三光工堂さんには,他の樹種のコブがあるようなので,資金が足りたら漁ってみようと思います.
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いよいよ北に向かう訳ですが
大陸の付け根で,フランスの方へ寄り道すると,エボウションの製作・販売所があります.ロメオさんのブライアー製作所Romeo Briar(www.romeobriar.com/)
主にフランス産の原木を使うようで,日本にも卸しているそうです.
個人輸入PayPal可.
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あとがき
ほぼ30年ぶりに,まじめに独文和訳を試みました;
当時覚えた量よりも,現在忘れている量の方が多い(この算術は正解です).
この調子では,ウルムに向かうアルプス越えで,凍死するかも知れない(笑)
Pipendogeさんは,日本のパイプ作家お二人をよく御存じだとか.
それがどなたであるかは,Pipen-dogeサイトで確認して下さい.     終り