S雑記: ストレートグレインパイプの年輪を数える2010/05/22

 第1話  ストレートグレインといわゆる”柾目”との関係
 パイプの木目を観賞する視点からは,”それ”をどう呼んでも構わないと思いますが、
木材を観察する視点に立つと,やや問題が生じるかもしれません.日本で木材を研究 したり,加工したりする人達は,それを下図のように呼んでいます.

木材の基本3断面
   
これをブライヤー材に当てはめると,下図のようになるでしょう.  
ブライアー材の基本3断面

ブライアーブロックを入手して,最近,基本3断面を磨いています. まだ志半ばですが参考までに,下図に展示します.
ブライアーの基本3断面
*注 Fig.1-4のT’断面は接線方向 と60°交差

パイプの世界で,一般にストレートグレインと呼ばれる平行縞は年輪模様ではない.このことはFig.1-2から明らかですが,いつの間にか ”ス レートグレイン=柾目” という錯覚に陥りやすいことも現実としてあるでしょう.ここでの”柾目”は,あくまで木材を観賞する視点では問題はないと思います. しかし木材の構造や微 細な組織を考える場合には,問題が生じることもあり得るので注意が必要でしょう.例えば過日の記事などはその典型例と云えます
  
『ブライアーは多孔質』と云う場合,パイプ材で ”孔” の方位はどのようになっているか.力学特性,あるいは耐熱性といった物理・物性を考える際に,上図に写されたような木材組織の方位をきち んと掴んでおかないとまずいでしょう.この記事に誤認がないことを祈りながら,ここまでとします(笑).下図は練習用です.
年輪判定練習

 

第2話  ストレートグレインパイプの年輪を数える
前記事が正しいとしての話ですが・・・       
 It might be able to count the numbers of growth rings in The Bruyère Tree as following Fig.1                                                            
ブライアーの年輪
 Nos. of growth rings = 6/10mm
 The radius growth ratio = 10mm/5years 
   
怪しいところもありますが,上の図では多めに見て10本はありそうです(笑)このブライヤールートの成長速度は,ボウルトップ付近で 10mm/5年くらいか.日本の木材文化の中核をなす”柾目”は,イングランドブライアーパイプの至宝である(?)
ストレート・グレインと直交するので,straight grain を柾目と訳すのは,やや問題があるかもしれません. カタカナでストレートグレインとしておけば,問題はなさそうです.
蛇足ですが5月20日記事のFig.2で,Ub2層には図の縦方向に早材道管が通っているということにしておきます(全くのダメ記事という訳でもなさそうに思えてきましたが) 


第3話 ダンヒルDRの年輪年代
前記事の年輪決定が正しいと仮定しての話ですが・・・

前出のサンプルはDRAです.半径の平均的な成長速度は10mm/5年でした.この速さで百年経過すれば,半径は20×10mm,直径は40cmと云 うことになります.樹齢百年で40cmという太さは,わが家で祖父の植えたヤマツツジの 約2倍.
最近では,地球の海洋プレートの変位速度は数cm/年と推定されています.ブライアーの平均的な成長速度はプレートより は遅いですが,樹の仲間で比較した場合,特別に成長が遅いという訳でもない.

コメント

_ oldbriars ― 2010/06/01 11:02

パイプ界で言うところの「ストレートグレイン」は植物組織の導管であって、
日本の木材用語で言うところの「正目」とは違うものだということは認識していました。
サンドブラストで浮き出てくる所謂「リンググレイン」こそが年輪ですね。

そういえばバーズアイのことを「鳥目」「玉目」と訳しているパイプ関連書籍もありますが、あれも木材用語の「鳥目」「玉目」とはまったく違ったものではないかと思います。ブライヤーは特殊な根瘤であって、通常の木材の用語はそのまま適用できないのではないでしょうか。

_ ignis ― 2010/06/01 20:56

コメントありがとうございます.<リンググレイン>は,ご指摘の通りだと思います.
樹皮付きのブロックサンプルを眺めて,確信しました.

ブライヤーの特殊性は主として,地際や地下空間と云う ”自由成長が制約された”
環境で育ったことで,地上部の樹幹に見られる組織が変形しているのだろうと想像
します. これは,コブの素性がハッキリしないので,コブであると云うことを一旦棚
上げし,地表直下という条件の下で幹が成長したら・・と想像してのことです.

Fig.1-2と1-3に現れているように,成長輪は波状になっていますが,放射組織は大き
くは曲がっていません.前者は<面状組織>なので,地盤による拘束条件をまともに受
けて波打ち,後者は元々<針状>なので,生長点にかかる応力は小さいから真っ直ぐに
延びることができた・・と解釈しました.こう考えると,地表面上にある樹幹の組織(名)
をそのまま適用してもよさそうだと考えました.

そうは云っても,同様な疑念が消えた訳でもありません.書いてしまいましたが(笑).
幹,根瘤,根と連続したサンプルを観察しないと,スッキリしたことは云えませんね.
とりあえず<年輪>は間違いないと思いますが.

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