S雑記: 辞典ではどのように説明されているか2010/03/03

この記事は
岩波理化学辞典(第5版)
;(注:以下文中で・・・は、一部を省略した転記である)
から適宜加筆してゆきます

ニコチン[英仏nicotine,独Nicotin] C₁₀H₁₄N₂   <---(念のためC:H:N=10:14:2)
 ピリジンアルカロイドの1つ。タバコ属植物Nicotianaなどの葉の中にリンゴ酸塩またはクエン酸塩として存在する。無色、特異臭の油状液体。沸点247℃(745Torr)。空気中では褐色に変わる。水に溶ける。タバコの葉中の塩に石灰乳を加えて塩基を遊離させ、蒸留して留出液からエーテルで抽出する。猛毒で中枢および末梢神経を興奮させ、腸および血管を収縮させて血圧の上昇をおこす。下等動物に対しては毒性が弱い・・。

ピリジンアルカロイド[pyridune alkaloid]
 構造上ピリジンまたはピぺリジンの誘導体とみなされるアルカロイドの一群・・。

ピリジン[pyridine,Pyridin]
 窒素原子1個を含む6員環複素環芳香族化合物。無色、特有の悪臭をもつ液体。融点-41.8℃沸点115.5℃。骨油中に存在・・。

アルカロイド[英alkaloid 仏alcaloÏde 独Alkaloid]
  植物塩基ともいう(plant base)。アルカリに似たものという意味で名づけられた。植物体中に存在する含窒素塩基性物質で、重要な生理作用、薬理作用を示すものが多い。・・アルカロイドは、植物体内で各種のアミノ酸から生合成され、特定の科に属する植物中に見出される。ふつう同一植物中に数種混在し、それらは親近な化学構造をもつことが多く・・。植物体中では種々の酸の塩基となっている。含有する植物の科名を付してヒガンバナアルカロイド、・・他のようによばれる。また化学構造上の類縁により20種ほどに分類されている。遊離の状態では多くは無色の固体・・。

タール[tar]
 狭義には石炭乾留で得られるコールタールをさしていたが、広義には有機物の熱分解で生じる黒色ないし褐色の粘稠(ねんちゅう)な油状物質の総称で、木タール、石油タールなどを含めていう。
 1)コールタール(cool tar). 比重1.1~1.2、とくに低温タールと区別するときは、高温タールという。収率は石炭の重量に対し3~6%である。主として芳香族炭化水素からなり、フェノール、クレゾールなどのフェノール類、少量のピリジンなどの塩基性油、ごく微量の二硫化炭素、チオフェンなどの硫黄化合物を含む。・・・コールタールの留分はa)軽油.・・・ b)中油.・・・ c)クレオソート油・・・。
 2)石油タール. 石油やその熱分解物の蒸留残渣をいい、石油アスファルト、石油ピッチ、釜残油などを総称する。

温度 [英 temperature, 仏température,独Temperatur ]
 物体の温かさ、冷たさの度合いを示す語。物理的には熱平衡を特徴づける尺度である。熱平衡にある2つの物体は温度が等しいという・・・。

[英heat, 仏 chaleur, 独 Wärme]
   温度が異なる2つの物体が接触するとき、高い温度の物体から低い温度の物体に移動するエネルギーをいう・・・。

熱平衡 [thermal equilibrium]
 熱の交換が可能なように連結された個々の物体や・・・。

熱伝達  [英 heat transfer, 仏 transfert de chaleur, 独 Wärmeübertragung]
 伝熱、熱移動ともいう。物体中の熱の移動機構を大別すると、熱伝導、対流伝熱、放射伝熱およびこれらの組合せとなる。これらの機構にしたがっておこる熱の移動現象を総称して熱伝達という。

熱伝導 [ conduction of heat, conduction de chaleur, Wärmeleitung]
 物質の移動や放射によるエネルギー輸送なしに熱が物体の高温部から低温部に移る現象。物体内の各点の温度をθとすれば、各点における熱流Qは等温面に垂直な温度勾配(▽θ)に比例して、Q=-K▽θである・・・。

熱伝導率
[ thermal conductivity,heat conductivity,conductibilité calorifique, Wärmeleitfähigkeit]
  熱伝導度ともいう。物体内部の等温面の単位面積を通って単位時間に垂直に流れる熱量と、この方向における温度勾配との比をいう。これは等質等方性物体の場合でスカラー量であるが、異方性の物体では・・・(式につきタイプ不能)。
 一般に物質については定数であるが、温度、圧力により変化する。熱伝導率は物質の構成粒子の移動または衝突によって熱運動のエネルギーが伝えられていく機構で決定される。金属は自由電子による大きな熱伝導率をもち、電気伝導率との間にウィーデマン-フランツの法則が成り立つ。また気体の熱伝導率Kは、分子の平均自由行程をλ、速さの平均を<v>、密度をρ、1gあたりの比熱をcとして、K=ρ<v>λc/3 で与えられる。    

燃焼 [ combustion, Verbrennung]
  光と熱の発生を伴う化学反応で、定圧またはそれに近い条件下でおこるものをいい、爆発と区別する。一般に可燃物質と酸素との反応でおこるが、酸素や硝酸などとの酸化反応のほかに可燃物とフッ素や塩素などとの反応でもおこる。燃焼は一般に気相中でおこり、高温部を炎といい、炎の最高温度を燃焼温度(combustion temperature)という。炭素のように炎を伴わない燃焼もあり、生体内の酸化反応も燃焼ということがある。可燃物質の単位質量を完全に燃焼したときに発生する熱量を燃焼熱(heat of combustion)あるいは発熱量( heat value,carolic power)といい、発生する水蒸気の凝縮熱を含めたものを総発熱量あるいは高発熱量(higher
heat value)、含めないものを真発熱量あるいは低発熱量(lower heat value)という
以上(2月14日)

脱水[1] [desicassion]  水を除き乾燥すること。
脱水[2] [dehydration, déshydratation, Entwässerung]
  化合物からの脱水には以下の3つの意味がある.1)結晶水を取り去ること 2)化合物中から水素と酸素(ヒドロキシ基)を水として脱離させること 3) 2種の化合物の反応で水の離脱により縮合反応を行わせること。

縮合反応 [ condensation, Kondensation]
2個以上の分子,または同一分子内の2つ以上の部分が,(ふつうは原子または原子団を分離して)新しい結合をつくる反応をいう。同一分子内の縮合を特に分子内縮合という。分離された原子または原子団は結合して簡単な分子をつくる。エステル化・・。
以上(5月14日)

温室効果[greenhouse effect]
放射平衡にある気温が,熱放射を吸収する物質の存在によって,それが無い場合より
高くなることをいう.温室のガラスは,入射する可視光線に対しては透明であるが,室内から外に向かう熱線を吸収してその一部を室内に送り返すので,内部の気温を高める
作用がある(実際の温室内の気温の決定要因としてはそれほど重要ではない)・・・
地球大気には,H₂O,CO₂,O₃,雲粒,エアロゾルなど赤外線を吸収する物質が含まれ地表から宇宙空間に向かう熱線を吸収して同様の効果を生む.・・・。

黒体 [black body, corps noir, schwarzer Körper]
すべての波長の放射を完全に吸収する物体をいう.たとえば炭は黒体に近い.・

黒体放射 [black-body radiation]
空洞放射ともいう.放射を透さない壁で囲まれた空洞内部にあって熱平衡に達した電
磁波動をいう. 熱輻射,温度放射[temperature radiation]ともいう.物体から熱エネルギーが電磁波として放出される現象,あるいはその電磁波をいう.そのエネルギーおよびスペクトル分布は,物体の種類と温度だけで定まる.特に黒体からの熱放射(黒体放射)はプランクの放射法則に従う.・・・・