メシャムは火山弾?2012/02/29

  買って積み重ねただけの中古本から、最近取り出した《パイプ大全-第三版》.
第5章パイプの歴史メアシャム・パイプ(pp.210-212)を読んだところ
『・・・、近年のウィーン大学での研究は、これを火山弾としている
(一九九二年、国際パイプアカデミーの年次総会研究発表)』 という一文。
ここをどう読むか、かなり悩ましいところです。

 海泡石とセピオライトsepioliteについては、以前に
藤井紀之:『トルコからの便り(その3)』.地質ニュース470号,57-67頁,1993.
を紹介したことがあります。今回、改めて読み直しました。
 この藤井氏の解説によると、R.A.Callenという研究者が1983年にセピオライト(およびパリゴルスカイト)鉱床の分布と産状を整理して3つの成因を挙げているそうです。その一つに、<玄武岩質ガラスや火山性堆積物が熱水変質を受けて生成される> 
という見方があるようです。しかしこの過程は、パイプの材料になるような海泡石の成因ではなく、工業用として大規模に稼行されるセピオライト(層状)鉱床の成因の一つだそうです。
 藤井氏自身はCallenの総括とは別に、独自の観察結果に基づいて3つの産状を区別してそれぞれの生成過程についての考えを述べています。氏は、パイプの原材料に使われているエスキシェヒル付近の<いわゆる海泡石>を、セピオライトの一つの特徴的な産状として扱いそれが<マグネサイト礫の変質>であると云う見解を述べています。氏と同じ見方をしている研究例も幾つかあるようです。
 
 ウィーン大学のホームページでは、今のところ何も分りません。
トルコの鉱物資源開発調査総局Maden Tetkik Arama Enstitusu Genel Müdürlüğü)http://www.mta.gov.tr/v2.0/index.php
には、セピオライトに関する10数件の論文が出ています。その中にも『火山礫凝灰岩層(lapilli tuff)の一部にセピオライトがあり、熱水変質による』 とする論文があります(Taner İRKEC andTaner ÜNLÜAN,1993)。しかし、ここに記載された事例は産状が海泡石とは異なるようです。

 パイプ大全の引用の意味は言い換えると、<海泡石が、直接的に火山から噴出した>と云うことです。海泡石を野外で観察した経験がないので、はっきりしたことは言えませんが、そのような現象は火山では考え難いことですから、引用の元になった研究は
<海泡石の原岩火山弾であろう>と云う主旨ではなかったかと想像しますが、
本当のところは分りません。

 『トルコからの便り(その3)』を読んで以来、ブロックメシャムの原岩はマグネサイトだと思っていましたが、今回あらためて他の論文も読んでみると、原岩は一種類ではないかもしれないと云う印象をもちました。<マグネサイト礫の変質>は間違いないところでしょうが、<火山礫(火山弾)の変質>もあるかもしれない-同じ場所に共存することは無いと思いますが。