洪水とダム#06 - 湿布費か、それともダム・堤防建設費か ― 2018/07/24
まもなく96歳を迎える母は、今年の2月まで20年近く、10数種類の”薬”を飲み続けてきた。その甲斐あってか、3月に徐脈が酷くなり、三途川を渡り始めた。其の後の段取りが一瞬浮かんだが、速やかに救急搬送して頂き、ペースメーカーをセット、3週間ほど入院の後に、歩いて退院。現在の服用薬は以前の1/4量、『電池交換は8年後』。
現在、母は気温が多少下がったとみるやシルバーカーを押し、雑草をむしっている。高額な医療器具をタダ同然でセットして貰いながら、息子の私が言うのもナンですが;
有名な経済紙の記者グループの調査によると;
2016(?)年に、医療機関が処方した全”湿布”数は100億(?)枚で、それに充てられた保険費は、”彼らの試算”によれば1,500億円に上るらしい。処方は主に高齢者に向けられたもの推定され、ゴミ箱に直行したり、タンスで眠ったままのものもあったかも知れない-と結んでいた・・・
(?):この値は記憶違いかも知れません。試算額は、たぶん〇です。
私の記憶では、いま進行中の”新丸山ダム”の建設事業費は、最終的に3,500億円。
そこで思った;
もし日本中の高齢者が、私も末席に位置する一人ではあるが、
医療機関で”しっぷ”を処方されたら、その半量を”自主返上”しませんか。
そして、返上分に相当する保険費を、【新丸山ダム建設貯金箱】に入れて貰う。
そうすれば、5年後には全工事費相当額が溜まってくる。丸山よりもう少し小さいダ ムなら、三つや四つは簡単に造れるでしょう。
どうしても湿布をもっと沢山貼りたければ、総て自己負担でお願いしたい。
そうしないと、格安の湿布を貼っている最中に、あなたの子や孫が、タンスごと洪水 にさらわれる事態が起こりそうです。
この事象の生起確率は、笑い話で済ませられる程には、小さくないだろう。
ダムよりも、もっと安い堤防案を選択しダムの無駄を省く!-これは先の政策です。
一見もっともな論理で、国民の大多数?を納得させた感がある。私もその一人です。
しかし酷暑の最中、冷静に顧みると、私はあの時、間違っていたかも知れない。
ダム工事は普通、大きなゼネコンが頭になった共同企業体が請け負って、地方・地元の建設会社と協力して短期集中的に行われる。それで、本体着工に入れば、数年先には未完成であっても、多少は洪水に役立つ高さのものが立ち上がる(?多分です)。
近所の今渡ダムをはじめ兼山ダムも、天竜川の佐久間ダムも、工事期間中に洪水に襲われている。その時は中途半端なダムであっても、多少の洪水機能は果たすだろう。
堤防工事は、だいたいは地方の建設会社に割り振られて、小予算で少しずつ進められているところが多いようです。堤防オンリーに近い治水構想は、今、目の前にある堤防が計画高水に届くのは何時になるんだろうか-と心配になる。
今般の洪水被害は、激甚災害に指定されるとか-大きな予算が付いてこれで安心か、否。問題は;
巨額の予算がついて、多くの復旧・対策工事が発注されても、落札・契約成立に至るとは限らない-地方の土木建設業界には深刻な事情がある。
その道の知人から聞いた話では、つい先頃に起きた京都・宇治周辺の災害の時、対策工事を請け負う業者がいなくて、予算があっても、計画倒れになった所がかなりあったとか-事の真偽は知りませんが。
先の政策の後遺症か、地方の小規模な土木請負業者が消えた! その結果、生き残っている比較的大きな建設会社が工事契約を結んでも、現場作業をする人を集められないと云う現実。入札指名を辞退するケースが続出した-嘘みたいな本当の話だそうです。
どうやら現代日本社会は、正しい計画と十分な予算があっても、モノが造れない。
ダムと堤防。同等の治水効果が期待できば、安い堤防を選択する。至極もっともな比較結果ですが、同時に重要なことは、実現までの工期、いつ治水構想を達成できるか。 張り切って<総てのダム計画を見直すんだぁ!>と意気込んだ時に、治水構想を達成するまでの経過時間、改良・改築を完了させる時間が十分に考慮されたんだろうか-
ひとの心理として、『お金がその程度で済むなら、まぁ、いつでも直ぐできるな』がある。堤防建設が『少額だからすぐやってしまおう』か『少額なら何時でもやれるな』『洪水時期はまずいな』で先送りになる-そのような、ひとの問題もありそうだ。
日本全体で、あの時以降、堤防構想はどの程度実現されたでしょうか?
まぁ~、治水計画の達成が遅れ、川が氾濫しても、そこにダムが無ければ<ゲート操作orダム管理の検証委員会?>を立ち上げる経費と時間は削減できるに違いない。
最近のコメント