海泡石(メシャム) はただ <白い> だけ?- ― 2012/03/24
<メシャム製品として販売>されていて、購入した品が手元に三種あります。
<白い>、<軟らかい>、<軽い>・・・ それ以外に<何か特徴はないか>
比較に<クレイパイプ>を加えた計4品を、土石材料として観察することにしました。
断口や研磨面に、どのような模様(岩石の組織)が現れているか-に注目して
模様の特徴から、それが天然石か人工石かを判別する- ことがさしあたっての目標です。
メシャム喫煙具にみられる岩石組織
Ⅰタイプ: 天然石(海泡石)-と見做せそうな組織、”いわゆるメシャム”パイプの研磨面(2010?年製)
<白い>、<軟らかい>、<軽い>・・・ それ以外に<何か特徴はないか>
比較に<クレイパイプ>を加えた計4品を、土石材料として観察することにしました。
断口や研磨面に、どのような模様(岩石の組織)が現れているか-に注目して
模様の特徴から、それが天然石か人工石かを判別する- ことがさしあたっての目標です。
メシャム喫煙具にみられる岩石組織
Ⅰタイプ: 天然石(海泡石)-と見做せそうな組織、”いわゆるメシャム”パイプの研磨面(2010?年製)
【組織の記載】
a図:0.2mm程の大きさで不規則な形をした1種類の斑状結晶が一様に分布している. 斑晶の間は同種とみられる微細な鉱物粒子がマット状に埋め尽くしている. 写真下方にある平行な細い筋は研磨時の傷跡です.
b図:シャンクの端面で、aに垂直な断面である.写真下方の5時から7時の間に岩石の組織が現れている.それ以外の範囲では切断時に研磨されて本来の組織が見えません.結晶あるいはその集合体が、一定の方向に(写真では水平方向)伸びた形を示している。一部では細長く連なって、緩やかに波打ちながら平行な組織を作っている(”山と谷”の平行配列とも言えます).
【天然か人工か】
このサンプルが<海泡石>であるかどうか、また<鉱物の種類>も決定できていません。しかし上のa図とb図-特にa図の鉱物組織により、このパイプの材料は人工岩ではなく、天然の岩石であると判定できます。
【原岩の推定】
<海泡石>はある既存の岩石が変質してできたものと考えられていますが、それはどのような岩石であったか- これは実際のところ難問です。かしこのサンプルから、部分解答は導けそうです。まず、<火山弾(火山岩)>説は、上のサンプルではありそうにない。 火山弾に斑晶(斑点状の大きめな結晶)が含まれているとすれば、それは溶岩(あるいはマグマ)と言う液相の中で成長したものなので、その鉱物本来の形(自形~半自形)をしていることが普通です。つまり幾つかの平滑面(直線)で区切られた形を示します。ところがa図に自形結晶は一つも無く、総てが他形を示している。その他、火山岩に特有な組織は肉眼では認められません。a図から<これは火山弾ではない>。
以下は印象ですが-これまでに読んだ参考文献と上の写真に映っている組織から、現時点でこのサンプルの原岩は、下図のCのような結晶片岩であった可能性が高いと考えています。b図の平行な組織が、程度は弱いですが<片状構造schistosity>に見えるからです。a図の斑状結晶の一部に、僅かでもマグネサイトが残っていれば・・・
a図:0.2mm程の大きさで不規則な形をした1種類の斑状結晶が一様に分布している. 斑晶の間は同種とみられる微細な鉱物粒子がマット状に埋め尽くしている. 写真下方にある平行な細い筋は研磨時の傷跡です.
b図:シャンクの端面で、aに垂直な断面である.写真下方の5時から7時の間に岩石の組織が現れている.それ以外の範囲では切断時に研磨されて本来の組織が見えません.結晶あるいはその集合体が、一定の方向に(写真では水平方向)伸びた形を示している。一部では細長く連なって、緩やかに波打ちながら平行な組織を作っている(”山と谷”の平行配列とも言えます).
【天然か人工か】
このサンプルが<海泡石>であるかどうか、また<鉱物の種類>も決定できていません。しかし上のa図とb図-特にa図の鉱物組織により、このパイプの材料は人工岩ではなく、天然の岩石であると判定できます。
【原岩の推定】
<海泡石>はある既存の岩石が変質してできたものと考えられていますが、それはどのような岩石であったか- これは実際のところ難問です。かしこのサンプルから、部分解答は導けそうです。まず、<火山弾(火山岩)>説は、上のサンプルではありそうにない。 火山弾に斑晶(斑点状の大きめな結晶)が含まれているとすれば、それは溶岩(あるいはマグマ)と言う液相の中で成長したものなので、その鉱物本来の形(自形~半自形)をしていることが普通です。つまり幾つかの平滑面(直線)で区切られた形を示します。ところがa図に自形結晶は一つも無く、総てが他形を示している。その他、火山岩に特有な組織は肉眼では認められません。a図から<これは火山弾ではない>。
以下は印象ですが-これまでに読んだ参考文献と上の写真に映っている組織から、現時点でこのサンプルの原岩は、下図のCのような結晶片岩であった可能性が高いと考えています。b図の平行な組織が、程度は弱いですが<片状構造schistosity>に見えるからです。a図の斑状結晶の一部に、僅かでもマグネサイトが残っていれば・・・
Petrography(TurnerF.J. 他,1954) より
アナトリア半島の地質学的枠組み」(ムラト・エレンディル,加藤硯一訳,1993年,地質ニュースno.467,pp.11-20)を少し読みましたが、『複雑で難しく,よく解からない!』(笑)。
しかしCのような岩石の礫が変質前の堆積層中に在ったとしても不思議ではない-果たしてどうでしょうか?
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以下の3種はみな、写真を撮る最中に 「”練り物”だな」 との印象を受けました。
<天然石>と判定するだけの、明瞭な組織が見出せません。正体が分り難い。
それで簡単に済ませます。
Ⅱ-1タイプ: 1種の鉱物からなる人工岩の組織
メシャムシガレットホルダーの研磨面(英国製,戦前)
アナトリア半島の地質学的枠組み」(ムラト・エレンディル,加藤硯一訳,1993年,地質ニュースno.467,pp.11-20)を少し読みましたが、『複雑で難しく,よく解からない!』(笑)。
しかしCのような岩石の礫が変質前の堆積層中に在ったとしても不思議ではない-果たしてどうでしょうか?
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以下の3種はみな、写真を撮る最中に 「”練り物”だな」 との印象を受けました。
<天然石>と判定するだけの、明瞭な組織が見出せません。正体が分り難い。
それで簡単に済ませます。
Ⅱ-1タイプ: 1種の鉱物からなる人工岩の組織
メシャムシガレットホルダーの研磨面(英国製,戦前)
a図: ショートピースのヤニで淡黄褐色に汚れていたので、細かいサンドペーパーで磨き出した新しい端面です.内側から外側に向かって淡く着色されている.これは”タバコの煙” が結晶間の隙間に入ってついた汚れでしょう.
もっとも,肝心の結晶の輪郭は肉眼では全く判別できません.顕微鏡下で観察しないと無理なようです.
b図: 丸みのある暗色の斑点が見える.その一部は鉱物のようでもあるがa断面には無いので,空隙に詰まった”ゴミ”かも知れません.
c図: ネジ山が切られている”飴色”を呈する部分は”樹脂”でしょう.マウスピースを
接続する部分は、鉱物と樹脂を混ぜて作った部材で、a、bの本体とは異なる材料のよ
うに見えます.金属リングを外せば、両者の関係がハッキリするかも知れません。
Ⅱ-2タイプ: 複数種の鉱物からなる人工岩の組織
キャラバッシュパイプの火皿断口面(Kaywoodie, c.1930)
もっとも,肝心の結晶の輪郭は肉眼では全く判別できません.顕微鏡下で観察しないと無理なようです.
b図: 丸みのある暗色の斑点が見える.その一部は鉱物のようでもあるがa断面には無いので,空隙に詰まった”ゴミ”かも知れません.
c図: ネジ山が切られている”飴色”を呈する部分は”樹脂”でしょう.マウスピースを
接続する部分は、鉱物と樹脂を混ぜて作った部材で、a、bの本体とは異なる材料のよ
うに見えます.金属リングを外せば、両者の関係がハッキリするかも知れません。
Ⅱ-2タイプ: 複数種の鉱物からなる人工岩の組織
キャラバッシュパイプの火皿断口面(Kaywoodie, c.1930)
A層: 火皿の本体をなす部分.光源の関係で黄褐色の色調が強く現れていますが,実物はもう少し白っぽい.複数種の粒状鉱物とそれらの間を埋める微細な粒子からできています.表面がざらざらしています。
B層: 乳白色の微細な粒子が見える.A層の一部の表面を覆い、部分的にAの組織中へ入り込んでいる.”釉薬”かも知れません.
C層: B層表面にあり緻密.焼成時にBが硬化してできた薄膜と推定.水浸させた時に僅かに吸水したことから,ガラスではないでしょう.
B層: 乳白色の微細な粒子が見える.A層の一部の表面を覆い、部分的にAの組織中へ入り込んでいる.”釉薬”かも知れません.
C層: B層表面にあり緻密.焼成時にBが硬化してできた薄膜と推定.水浸させた時に僅かに吸水したことから,ガラスではないでしょう.
Ⅱ-3タイプ: 素焼き粘土(人工岩)の組織
クレイパイプの断口面(アイリッシュ,2010年)
クレイパイプの断口面(アイリッシュ,2010年)
a図のポツポツは石英粒で,b図にもかろうじて映りました.
b図の中央上部にある平滑な分離面が意外でした.これは焼成後に体積収縮が生じてできた分離面で,火成岩にできる”冷却節理”に相当すると思われる.
以下次回へ.
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【参考資料】 海泡石を構成するセピオライトの結晶は、下写真のようなものだそうです。
b図の中央上部にある平滑な分離面が意外でした.これは焼成後に体積収縮が生じてできた分離面で,火成岩にできる”冷却節理”に相当すると思われる.
以下次回へ.
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【参考資料】 海泡石を構成するセピオライトの結晶は、下写真のようなものだそうです。
下坂康哉・和田猛郎:『新素材セピオライト-近くて遠い粘土』,地質ニュース,no.385,p6-18,1986年9月号.より
あとがき
キャラバッシュの重量を測っている時に、火皿の一部が欠けていて、そこに多層構造と、ざらざらした鉱物粒子が見えたことがきっかけとなって、本稿の展開になりました。パイプに原岩を構成していた鉱物の輪郭が残っていた-仮像pseudomorphと呼びます-とは! 予想外の成果でした。
あとがき
キャラバッシュの重量を測っている時に、火皿の一部が欠けていて、そこに多層構造と、ざらざらした鉱物粒子が見えたことがきっかけとなって、本稿の展開になりました。パイプに原岩を構成していた鉱物の輪郭が残っていた-仮像pseudomorphと呼びます-とは! 予想外の成果でした。
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